ゲーテ大先生が最後にこの街を選んだのには納得。五感を刺激されまくる

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ワイマール 「美しい」だけでなく歴史の重みを感じる

ドイツ生活の中で最終地点となったワイマールには、一番長く住みました。私が行ったばかりの頃は、まだ東ドイツの名残がたくさんありました。観光地になっており、とても綺麗な街で、中心街は馬車が走ってたり、世界遺産グロピウスの建築があったり(バウハウス建築大学の校舎)、ヒトラーがデザインした駅前の通りや建造物も存在しています。

イルム川沿いには、イルム公園やゲーテの山荘。ちょっと郊外に行くと、ワイマール公エルンスト・アウグストのために建てられたベルヴェデーレ宮殿などもあります。ここは現在一部、音楽家の高校、音大声楽科とギター科の校舎としても使われています。

有名な建築物や美しい自然 相反してボロボロになるまで物を大切に使う旧東の国民性

田舎だけど、溜息が出るほど美しい自然と調和の取れた建築、歴史的にも文化の中心であったことから、定年後の余生を過ごしたい街で人気でした。私がワイマールに移った当初は、土地もまだ安くて旧西ドイツから土地を買いに来る方が多くいたようです。

街の中心にも流れているイルム川は、川沿いが公園になっていて、川には白鳥がいたりして、散歩には最高のロケーションです。現実を忘れさせてくれるような空気感というか癒しがあったので、ゲーテが執筆にここを選んだのがとても良くわかりました。ちょっと郊外に出ると、ボロボロのアパートや無造作に木や草が生えてる土地なんかもありましたけど。そこが旧東です。

その前に住んでいたフランクフルトとマインツは、旧西ドイツで、やっぱり比べると綺麗に整備されていたと思います。そして、これは本当にびっくりしたのですが、粗大ゴミに出されているもの(机やテレビやソファなど)、壊れたりしてないものもあるので、欲しい人が持っていくんです。

確かにまだ使えるものもたくさんあったし、無駄なゴミにならないのでリサイクル的な感じ??とも言えますね。

実際私もドイツ生活に慣れてきたら、テレビと机拾って使ってましたし、フリーマーケットもよく利用していました。

一見ボロボロ それが旧東ドイツの味わい

ただこれが、旧東に行くと、粗大ゴミとして捨てられているものが、もう本当にゴミなんです。もうこれ以上は使えないというところまで使う。本当に大事に使う。これが旧東ドイツです。

ワイマールには映画館が3つあって、そのうちのふたつは、ローカル映画館でした。ハリウッド映画なんかはここでは上映されないのですが、人の手作り感があって、なかなか味のある雰囲気です。e-werk(Eヴェルク)という方の映画館は、元々の座席にさらに少し座席を増やしているのですが、これがまた粗大ゴミから持ってきたようなやつで、これがなんとも言えない良い味を出してるのです。

そして、スクリーンと反対側の上の方では、映画「ニューシネマ・パラダイス」に出てきそうな、誰かがフィルムを回しているのが感じられて。このレトロ感が、私はたまらなく好きでよく通いました。

元々ドイツは、環境問題にはうるさい国で、リサイクルを利用して使う文化があります。大学のレッスンで使うだけなら、楽譜もやはりコピーでいいという感じでした。教則本なんかも全ページコピーして、文房具店で簡単に製本してもらって使ってました。図書館と文房具店にはよく通いましたね。

街の美しさは音色に比例する?!

13年もドイツに住んだので、いろんな街のオーケストラやオペラを聴きに行きました。中でもベルリンフィルは、どの街のオーケストラとも似つかず格別!奏者一人一人の音が皆同じ音色で、密度の濃い発音が、まさにドイツ語のようで衝撃を受けました。

それぞれ特徴があって好みもあるので、どれがいいという話ではないですが、ワイマールのオーケストラは、音がとても綺麗でした。なんかホッとする、みたいな聴く側に安心感を与えてくれる印象です。

ドイツには、Aオーケストラ、Bオーケストラ… とDくらいまで、上手いとされる段階がつけられていて、一応ワイマールも最高のAオーケストラです。

それもあるだろうけど、本当に街と同様に綺麗で落ち着きがある音色でした。実際、コントラバスのレッスンでも音色のことは、耳が痛くなるほど言われました。こういう美しさって、街の雰囲気と比例するんですかね?

そう思うと楽器の練習も同じ。楽器の前で弾くことだけが練習ではない、と思わざるを得なくなります。音楽には、見る、観る、聞く、聴く、そして感じて心に響かせる、これ本当に大事ですね。

ワイマールは本当に素敵な街だったけど、ここに辿り着くまでには街が綺麗云々、ドイツ人と日本人の違いに戸惑い、右往左往しました。そんな話はこちら↓

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